エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 千春だって、普段とは違っていた。
 この日のために小夜と一緒に選んだピンク色のドレスに身を包み、髪を結い上げて、いつもはあまりしないメイクまでしているのだ。
 久しぶりに着飾って、千春の心は自然と浮き立った。
 家でふたりを見送ってくれた康二だって『綺麗だよ、千春ちゃん』と褒めてくれた。

 ところが肝心の清司郎の反応は、残念ながら好感触とは言えないものだった。
 いつもとは違う装いの千春に一瞬目を見開いただけで、すぐに目を逸らし、咳払いをした。
 そして、『タクシーが来たから、行くぞ』とややぶっきらぼうに言って、くるりと千春に背を向けてしまったのだ。
 仕方がないと千春は思う、普段おしゃれをしない自分が少しくらいいい格好をしてもそう変わりない。
 ましてや千春とは違って女性経験もある彼なのだ。綺麗な女性など見慣れているのだろうから。
 それはわかっている。
 でも、気分が沈んでしまうのはどうしようもなかった。

「千春、行くぞ。会場はあっちだ」

 先へ行きかけた清司郎が振り返る。

「う、うん」

 千春は頷いて彼に続いた。
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