エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 パーティーは屋上庭園でのガーデンパーティーだった。
 ざわざわと歓談が続く会場で千春は隅っこに展示されたパネルの数々を熱心に眺めている。
 この団体のチャリティー活動を紹介したパネルだった。
 ほとんどの出席者はそこにはあまり注目せずに、社交に勤しんでいるから、その分千春はゆっくりとパネルを見ることができていた。
 さっき千春は清司郎の紹介で団体の代表者と話をした。
 高齢のその男性は活動内容に興味があると言った千春に丁寧に説明をしてくれた。
 そしてその会話は、千春に新しいなにかをもらたすものだった。
 八神家に来る前、千春はずっと自分だけが不幸なのだと思っていた。
 病気を抱えて生まれたことも両親を早くに亡くしたことも、自分だけが負担を強いられているのだと。
 運命を呪い自暴自棄になったこともある。
 でもこうやって外の世界へ出てみれば、世の中には千春と同じような境遇の子供たちはたくさんいて、今この瞬間にも誰かの支援を必要としているのだ。
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