エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 千春の人生は常に病気とともにあり、元気になることだけが目標なのだと言われてきた。
 でも今、手術が成功し、日常生活を送ることができるようになった自分の前に、新たな目標が目の前に現れた、そんな気分だった。
 すべてのパネルを読み終えて千春はホッと息を吐く。
 なんだか胸がいっぱいだった。

 将来への夢、希望、そんなものを自分が持つ日が来るなんて。

 もう一度深呼吸をして、千春は会場を見回した。
 千春がこんな風に思えるようになったのはまぎれもなく清司郎のおかげなのだ。
 できれば今の素直な気持ちを、彼にそのまま伝えたい。
 彼はさっきまでは千春のすぐそばにいて、千春が疲れていないか目を光らせていた。でもパネルをゆっくり見れるようにと少しだけ離れていったのだ。

 とはいえそう遠くへは行かないはずだけれど……。

 果たして、背の高い清司郎はすぐに見つかった。知り合いと思しき人たちに囲まれて穏やかな笑みを浮かべている。
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