エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
「もう少ししたら清司郎さんが国内初の手術を成功させたことが、世間に発表されるの。八神清司郎は国内最高の外科医として、日本中に知れ渡るのよ」

 そう言って絢音は、うっとりと頬を染める。そして千春に向かってこれまた嬉しそうに言い放った。

「ふふふ、そしたらあんた、お払い箱なんじゃない?」

「え……?」

 千春の口から掠れた声が漏れる。そこへ絢音が追い討ちをかけた。

「だってそうでしょう? 普通に考えて、いくら自分のキャリアのためでも、夜の相手もできないような役立たずの妻に一生縛られるなんてまっぴらでしょ」

 そう言ってくすくす笑う絢音に千春はなにも言い返せない。
 頭をガンと殴られたような衝撃だった。
 でも考えてみれば清司郎ははじめからそう言っていた。千春の手術の成功を世間に発表して、八神病院の評判を盤石なものにすると。
 あの時千春はやけっぱちになっていたから、ただ"そうなのか"と思っただけだった。むしろ不自然な結婚の理由として、納得したくらいだった。
 でも今、改めてそのことを言われると、胸がえぐられるように痛かった。
 たしかに絢音の言う通り、手術の成功を世間に発表してしまえば、清司郎と千春の結婚はなんの意味もなくなってしまう。
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