エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 だがそれに清司郎が首を振った。

「ダメだ。まだ体調が戻っていない」

「でも……」

「いいか千春」

 清司郎が厳しい眼差しを千春に向けた。

「お前の体調はまだ万全じゃない。まだ入院していてもよかったくらいだ。だがお前の叔父さん……結城氏が家で安静にさせるからと約束をしたから退院を許可した。それなのに……この状況でお前を家に帰すわけがないだろう」

 清司郎の言葉に千春は答えられない。
 なにもかも、彼の言う通りだった。
 黙り込む千春に清司郎がトドメのひと言を放った。

「もしお前になにかあったら俺の努力がすべて無駄になるじゃないか」

 清司郎は八神総合病院の医院長の一人息子というだけでなく、国内屈指の優秀な心臓外科医だ。
 二年前に渡米し、本場で心臓外科医としての経験を積んだ後、数ヶ月前に帰国した。
 そして千春の主治医となった。
 千春は生まれながらにして重い症例の心臓病を患っていた。
 生まれてすぐに診察をした医師には、根治する見込みはなく、二十歳まで生きられないだろうと言われたという。
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