エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 先輩ははははと笑って清司郎の背中をバシバシ叩く。そしてニヤリと笑って別の話題を口にした。

「それよりお前、結婚したんだな。俺に報告がなかったじゃないか。一生恨んでやるからな」

 戯けてそんなことを言う相手に、清司郎は少し気まずい気持ちになる。
 彼には随分世話になった。清司郎だって普通の結婚だったならちゃんと報告していただろう。
 でも残念ながら千春との結婚はそうではない。

「ちょっと急でしたから。……すみません」

 誤魔化すようにそう言うと、相手はまたはははと笑う。

「わかるよ、めちゃくちゃかわいい子だったもんなぁ! お前、誰にも取られないように急いで結婚したんだろう! さっきからあっちこっちで野郎どもがソワソワしてるぞ。あの美人は誰だってな!」

 まったく悪気のないその言葉に、清司郎は心の中で舌打ちをした。
 実際、そうなのだ。
 今日の千春は特別にかわいくて、会場では目立ってしまっていた。

 淡いピンク色のドレスは肌を見せないデザインだが、それが却って彼女の持つ清らかな空気を際立たせている。
 濡れたような大きな黒い瞳、同じ色の艶やかな髪は清楚に結い上げられていて、まるで池の辺りに咲く水仙の花のようだった。
 極め付けはふわりと香る甘やかな香り。
 朝、彼女を目にした瞬間から清司郎は彼女を直視できないでいる。

 もし見つめてしまったら、すぐにでもその白いうなじに口づけてしまいそうだった。

「いやーあんな子今時いるんだな! 見るからにピュアじゃん!」

 先輩としてはお世話になった相手の言葉に、清司郎は言い知れぬ不快感を覚える。
 医師といっても所詮は皆普通の男。
 飲みの場では、必ずやれどこの病院は看護師がかわいいだのという話題が出る。
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