エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 夏彦の言葉に清司郎の頭でなにかが弾ける。
 奥歯を噛み締めて目の前の男を睨みつけた。

「千春はものじゃない。彼女をそんな風に言うな」

 夏彦がそれを鼻で笑った。

「はっ! 綺麗事言うなよ。お前だって千春を金で買ったんだろう? ……俺となにが違う?」

「なんだと? 俺は……!」

 だが清司郎はそれ以上言葉を続けることができなかった。
 清司郎は彼女の意志に反して医療費を払い、結婚した。そして今、彼女がそれに負い目を感じていると知りながら、手に入れようとしている。
 目の前の男となにが違うのか、まったく答えが見つからない。
 言い淀む清司郎に、夏彦が薄く笑う。だがすぐに憎悪の目で睨みつけた。

「俺は諦めない。絶対に千春は取り戻すからな。……どんな手段を使っても」

 異常なまでの千春への執着を見せて、夏彦は踵を返し今来た廊下を戻っていく。
 残された清司郎は拳をにぎり締めて、その場に立ち尽くした。

『俺となにが違う?』

 その言葉が頭から離れなかった。
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