エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~

ホテルの夜 千春

 パーティーがお開きになったのは、日が傾いてからだった。
 千春はチェックインしたホテルの部屋の窓から沈みゆく夕日を眺めている。
 頭の中は絢音に言われたことでいっぱいだった。
 清司郎との結婚生活には終わりがある。そしてその終わりがもうすぐそこまで近づいてきている。
 その事実を自分はよく考えなくてはならないのだ。

「千春、どうしたんだ? ボーとして。疲れたのか?」

 荷物を整理しながら清司郎が言う。
 千春は振り返って少し無理やり笑みを浮かべた。

「大丈夫」

 それでも彼は納得せずに、千春の元へやってくる。
 眉間にシワを寄せて心配そうな彼に、千春の胸は複雑な色に染まってゆく。
 今彼は、本当に千春を心配してくれているように思える。
 優しい眼差しは憂いに帯びていて、温かい手は労わるように千春の頬にそっと触れる。
 でもこれはすべてが千春のためではない。
 少なくとも彼の心の大半占めているのは、手術成功の発表までの間に千春になにかあったら困るということだろう。
 ここまできて千春になにかあったら、今までの努力がすべて水の泡となってしまうのだから。
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