エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 覚えたてのやり方で千春は一生懸命に彼を誘う。
 千春に触れる時、清司郎の方はいつも余裕たっぷりだったように思う。
 どうやって触れて、どこまで入り込み、どの辺りで引き返すのか……すべてが彼のさじ加減。
 そして彼はそれを決して誤ることはなかった。
 でもできれば一度くらい、彼に落ちてきてほしい。
 千春と同じように夢中になってほしかった。

「ん、ん、ん……」

 彼のシャツを握りしめて千春はキスを繰り返す。
 胸が苦しくて痛いくらいに切なかった。
 つたない千春の誘いでは足りないとわかっている。でもどうしても今はこうしたかった。
 彼が好きだから。
 彼を愛してしまったから……。

「はぁ……」

 唇を離して、一旦呼吸を整える。瞼を開くと、すぐそばにある清司郎の眼差しが、射抜くように千春を捉えていた。
 まるでなにかを咎めるようなその視線に、千春は身体をびくりと揺らし、反射的に身を引こうとする。

「あ……」

 でもそれは、うなじに差し込まれた大きな手に阻まれた。

「んんっ……!」

 大きくしなる千春の身体を危なげなく抱き止めて、今度は清司郎が千春を乱す番だった。
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