エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 つたないキスの仕返しとばかりに、やすやすと千春に入り込み、敏感なところを攻め立てる。
 結い上げられた千春の髪が解けてレースのドレスに散る。

「千春……!」

 愛されていないなんて信じられないくらいに、彼の声音は甘かった。
 まるで愛し合って結婚をした夫婦のように、情熱的で熱いキス。

「清君……」

 千春は祈るように目を閉じた。
 背中に感じる冷たいシーツの感触に、期待で胸が高鳴った。

 ——でもその時。

「千春、……熱がある」

 大きな手が額にあてられて、彼が離れた気配がする。
 目を開くと困ったような彼の視線とぶつかった。
 千春の胸がズキンと痛む。
 疲れると、熱っぽくなるのは千春にとってはよくあること。
 でもこのタイミングでそうなるのが、すべてを物語っているようだった。
 千春には清司郎の妻としての役割はこれっぽっちも果たせない。誰かにそう言われているようだった。
 たとえそれが仮初の妻だとしても。

『捨てられたあとどうするのか、身の振り方くらい考えておいた方がいいわよ』

 少し熱い息を吐くと、絢音の言葉が頭に浮かんだ。
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