エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~

別れの予感

 夏の日差しがサルスベリの木の葉に透けてキラキラと輝いている。
 パーティーの日から一週間が過ぎた。この日、千春は久しぶりに午後の散歩をしに庭へ出た。

 パーティーの日に出た熱は、結局次の日には下がった。
 少し疲れただけで悪いものではないと清司郎は診断したが、でも念のためしばらく外出は控えるようにしていたのだ。
 そして今日、そろそろ散歩をしてもいいと清司郎から許可が出た。

 小夜は買い物へ出ているから、千春はひとり夏の庭をゆっくりと歩いている。
 熱にうなされてたあの夜、千春は結城家を出て以来の悪夢を見た。
 清司郎が千春を捨てて去っていってしまう夢だ。

 ——熱なんか出して、俺のキャリアを傷つけるならお前なんかいらない。

 ——妻としても役立たずのくせに。

 そう言って、冷たく背中を向ける清司郎を千春は泣いて追いかけた。

 ——捨てないで、清君!

 ——私、いい奥さんになるから!

 嫌な映像が頭に浮かんで、千春は目を閉じる。
 もちろん、あれは夢だとわかっている。
 現実の清司郎はあいかわらず優しくて、小言を言いながらも千春を心配してくれている。
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