エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
「……見合いは断るんだろう?」

 その問いかけに、千春はすぐには答えられない。彼がそこに興味を示したのが意外だった。
 沈黙する千春に清司郎がもう一度確認をする。

「逃げてきたのは、見合いをしたくないからだ。断るつもりなんだろう?」

 真っ直ぐな彼の視線が痛かった。
 嫌だから断る、そんなあたりまえのことができるならこんなに幸せなことはない。
 千春は彼から視線を逸らし、ゆっくりと首を横に振った。

「ううん……断らない」

 清司郎が眉を寄せた。

「お見合いはお受けする」

「千春……! だが……」

「もう決まっている話なの。今日はあまりにも突然だったから驚いて逃げちゃったけど、断ることはできない話なの」

 うつむいて千春は一気に言う。自分が直面するどうにもならない現実を言葉にするのがつらかった。

「お前、それでいいのか⁉︎ 好きでもない男との結婚なんだろう?」

「仕方がないの」

 けしきばむ清司郎に、千春はあくまでも冷静だった。

「私、叔父さんの決めたことに逆らうわけにはいかないの。叔父さんが私の今までの医療費をすべて負担してくれたんだもの。いくらかかったか……清君も主治医ならわかるでしょう? 私の命は……私だけのものじゃないの」

「でも……!」

「今日は無理をしてしまってごめんなさい。もうこんなことはしないから、なるべく早く家に帰して下さい」
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