エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 澤田の焦ったような悲痛な声が部屋に響き渡り、同時に大勢のスーツ姿の人たちが部屋になだれ込むように入ってきた。
 清司郎と千春は部屋の隅へ追いやられる。
 スーツの軍団は皆一様に厳しい表情で、大輔、芳人、夏彦をそれぞれに取り囲んだ。

「な、なんだね、君たちはっ! いったいなんのまねだ!」

 大輔が彼らに向かって問いただす。
 千春もなにがなんだかわからずに、清司郎の腕にしがみついた。

「お前ら俺を誰だと思っている!」

 大輔のこの言葉に、取り囲むスーツ姿の男性のひとりが口を開いた。

「わかっております衆議院議員大林大輔先生。我々は東京地検特捜部です。あなたを贈収賄容疑で逮捕します。署まで御同行願います」

「なっ……!」

 大輔が絶句した。
 同じように芳人も逮捕令状を見せられて真っ青になっている。
 父親の秘書である夏彦も身柄を拘束されるようだった。
 有無を言わさず連れて行かれる三人を、千春は清司郎に抱かれたまま見送るが、突然の展開に頭がついていかなかった。
 叔父が逮捕されてしまったら結城の家はどうなるのだろう。
 ユウキ製薬は……?

「千春、大丈夫だ。なにも心配しなくていい」

 千春を包む腕に力を込めて、清司郎が囁いた。
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