エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~

別荘の夜

 一連の騒動の後、清司郎の運転する車に乗せられて千春は料亭を後にした。
 車は清司郎の家の方へは向かわずに、高速に乗り、街を抜けてゆく。
 車に乗り込む直前、清司郎がことの経緯を康二へ連絡したところ、そうするように言われたからだ。
 衆議院議員大林大輔とユウキ製薬社長逮捕という大事件に今、日本中大騒ぎで、芳人の養子である千春の嫁ぎ先八神家にもマスコミが来ているのだという。

『清司郎、どうせお前はここ最近の連勤で使い物にならん。しばらくオペもないから千春ちゃんを連れて雲隠れしてろ』

 康二が手配してくれた八神家の別荘へ向かうことになったのだ。
 結納の場では千春に優しくしてくれた清司郎だが、車を走らせ始めると、不機嫌になり黙り込んだ。
 車を停めて食料品や衣料品を調達している間も千春の方を見ようともしたない。

 その彼に千春はどうしていいかわからなかった。

 そうして日が傾く頃に、車は目的地にたどり着いた。

「降りて」

 車を停めて荷物を下ろし、清司郎が千春を素っ気なく促す。
 釣りが趣味だという康二が建てたその別荘は、静かな湖畔に佇む一軒家だった。

「入って」

 清司郎に言われて、建物中へ足を踏み入れると、玄関を抜けたリビングダイニングからは湖と沈みゆく夕日が一望できた。
 八神家同様、主人の人となりを表すかのような居心地のいい空間に、千春はホッと息を吐く。まるで八神家に戻ってきたような気分だった。
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