エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 いつも見守り、そばにいてくれた彼をこんなにも傷つけてしまった。
 視界がにじんで、清司郎が夕日の中に溶けてゆく。

 どんな言葉も意味がない。
 なにを言っても許されない。
 でも……!

「清……!」

「千春……!」

 涙に濡れて震える唇を開こうとする千春を、大股に歩み寄る清司郎が抱きしめた。震える声と乱れた吐息が、千春の耳に囁いた。

「無事でよかった……! 心配したんだ……千春!」

 広い背中に腕を回して千春は声をあげて泣き出した。

「せ……くん、ごめんなさい。勝手なことして……ごめ……さい」

 泣きじゃくる千春を包む清司郎の腕に痛いくらいに力が込められる。もう二度と離さないというように。

「ごめんなさい……」

「許さない。もう勝手に俺から離れないと約束しろ。じゃないと絶対に許さない‼︎」

「離れない。ずっとずっとそばにいる。清君、愛してる」

 熱く抱き合い、ふたりは愛を誓い合う。
 どんな言葉も、この胸の激情を表すには少し足りない。
 だからこそ千春はありったけの力で彼の胸にしがみついた。

「千春、俺のものだ。一生離さないから、覚悟しろ」

 いつまでも抱き合い愛を確かめ合うふたりを、湖畔に沈む夕日が真っ赤に染めていた。
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