エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
「よろしい。昼はどこかへ行ってテイクアウトしてもいいし、確か近くにテラス席があるレストランがあったからそこへ行ってもいいな」

 そして千春を解放して、また朝食を運びはじめた。

「パンはトーストにするのか?」

「あ、うん。私がやる」

 そう言って千春は、トースターにパンをセットする。
 そしてつまみを回して、ふと足元にあるゴミ箱に目を留めた。
 少し派手なピンク色のツイードの布がぐちゃぐちゃに丸められて捨てられている。

 これはもしや……。

 ゴミ箱をジッと見下ろしたままの千春が考え込んでいると、なにやら不穏な言葉が降ってくる。

「今すぐに、燃やしてやりたいくらいだ」

「清君!」

 千春は振り返った。
 ゴミ箱のピンク色は昨日ここへ着いてすぐに清司郎に脱がされた千春のワンピースだった。
 彼がこのワンピースを不快に思う気持ちは理解できる。
 千春だって少し派手な色と腕が出るデザインのこのワンピースをべつに気に入っていたわけではないけれど、でもだからといって……。

「なにも捨てなくてもいいのに」

 千春はため息をついた。

「もう二度と着ない服を残しておく必要なんかないだろう」

 清司郎が不機嫌に言い切った。

「こんな服、千春には似合わない」

 そう言ってコーヒーを淹れる準備をし始める。
 その言葉に、千春はゴミ箱を見つめたまま動けなくなった。

 こんな服。
 清司郎はそう言った。確かに主張の強いこの色を千春は好きになれない。似合わないとも思う。
 でも今彼の口から出た言葉に、別のことを思い出してしまって胸が痛かった。
 あのパーティーの日も彼は着飾った千春を見て同じように思ったのだろうか。

「……千春?」

 清司郎がそんな千春に気が付いて首を傾げた。

「どうしたんだ?」

 千春はハッとして首を横に振った。

「な、なんでもない」
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