エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 意識して笑みを浮かべるが、彼は納得しなかった。

「千春」

 コーヒーを置いてやってきて、また千春を腕に囲う。
 そして咎めるような眼差しを千春に向けた。

「もう隠しごとはなしだ。……ひとりで悩むのも」

 それでもすぐには言葉にできなくて、千春は黙り込む。
 大きな手が千春の頭を優しく撫でた。

「千春?」

 千春は小さく息を吐いて、ゆっくりと口を開いた。

「私にはこういう服も……ドレスも似合わないよね。痩せっぽっちだし、身体に傷があるもの……」

 それ自体は仕方がない。千春だって今さらそれを気にしているわけではない。でも正式に清司郎の妻になるなら、またパーティーや改まった席に呼ばれることはあるだろう。
 その時のことを考えるとどうしても憂鬱になってしまうのだ。
 清司郎が眉根を寄せた。

「千春、俺はそんなことは言っていない。千春の身体の傷は、お前ががんばった証拠だ。傷があるからお前はこうしていられるんだ。俺にとってはひとつひとつが愛おしいよ。あのワンピースはダメだけど、帰ったら好きな服を買ってやる。千春にぴったりのやつを」

 その優しい言葉も、素直に受け止めることはできなかった。
 目を伏せてうつむいたまま黙り込んでいると、頬を優しく突かれる。

「千春?」

 千春は少しむくれたまま、口を開いた。

「……私にぴったりの服なんてないよ。こ、この前のパーティーの時のドレスもいまいちだったみたいだし……」

「パーティーの?」

 清司郎が手を止めて意外そうに瞬きをした。

「似合ってなかったでしょう? 清君なにも言ってくれなかった」

 そう言って千春は彼の胸に顔を埋める。こんな子供っぽいこと言わない方がいいに決まってる。でも一度口から出たら止まらなかった。
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