エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
「千春さんが来られるようになってからユキは随分楽しく入院生活を送れるようになったんですよ。本当にありがとうございます」

 母親の言葉に千春は頬を染めて首を横に振った。

「いえ、私もユキちゃんと過ごせる時間が楽しみなんです。私も小さい頃からずっと入院生活でしたから、ユキちゃんとは話が合うっていうか……」 

「親友だよねー」

 ユキがニカッと笑って、千春もつられて微笑んだ。
 彼女が笑うと千春も嬉しくなってしまう。
 目を合わせて笑い合っていると、ユキが気がなにかに気が付いたように声をあげた。

「あ、そうだ、千春ちゃん。千春ちゃんたちお部屋でも読み聞かせやってくれるようになったんでしょう? ユキと同じ部屋の子が来てほしいって言ってたよ」

 これもまた新しく始めた活動だった。
 読み聞かせの時間にキッズルームに来られない子たち、もっと読んでほしい子たちに、部屋まで行って本を読んであげるのだ。
 千春と女子大生の真矢が中心となって希望がある子の部屋を訪れている。
 ユキの言葉に、千春は頷いた。

「わかった。今度行ってみるね。ありがとう」

 その時。 

「読み聞かせかぁ、いいなぁ」

 不意に声をかけられて、千春は振り返る。
 松葉杖をついた高校生くらいの男の子がニコニコして千春たちを見ていた。
 彼はユキに向かって問いかける。

「ユキちゃんもしてもらうの? 読み聞かせ」

 どうやらユキの顔見知りのようだ。
 ユキの母親が挨拶をしている。
 ユキが高校生に向かって反論した。  
「ユキしてもらわないよ。自分で読めるもん」

「時々談話室で一緒になるお兄さんなんです。ユキと同じくらいの妹さんがいるとかで優しくしてくれて。ね、ユキ」

 ユキの母親が彼を千春に紹介する。どうやら明るいユキにはあちらこちらに友達がいるようだ。
 千春は彼に向かって微笑んだ。

「そうなんですね。こんにちは」

 すると高校生はニコニコして今度は千春をジッと見つめる。

「? あの……?」

 そして突然ニカッと笑った。
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