エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
「なんだ、八神先生が夢中だっていう噂のかわいい奥さんは、お姉さんのことだったのかぁ、もったいないなぁ」

 でも翔太がユキの言葉を肯定するようなことを言うものだから、わけがわからなくなってしまう。
 千春は助けを求めるように清司郎を見る。すると彼は平然として、翔太をはがいじめにしたまま信じられない言葉を口にした。

「今回だけは許してやる。でももう二度と……」

「清君!」

 千春は思わず声をあげた。 

「やめてよ。もうっ」

"噂の奥さん"も"ラブラブで有名"もまったく意味不明だがとりあえず清司郎だけは黙らせなくては。
 翔太が得意げに清司郎を振り返った。

「ほら千春ちゃんが怒ってるよ、先生。今どき、束縛が強い男は嫌われるんだぜ。やだよね、千春ちゃん。あ、……いてて!」

「馴れ馴れしく呼ぶなって」

 清司郎がまた翔太を締め上げる。

「清君ったらっ!」

 千春が声をあげて清司郎を睨むと、彼はようやく翔太を解放した。
 翔太が清司郎をからかうように笑い出した。

「八神先生が奥さん大好きだって話、本当だったんだ! 俺がカラオケ行きたいって言っても絶対に外出許可くれないのに、奥さんの言うことはきくんだね」
 そして千春に向かって、ことの詳細を話し始めた。

「入院してから俺、よく看護士さんに声をかけるんだけどさ。皆必ず『八神先生みたいにいい男になったらね』って言うんだ。先生は確かにイケメンだけど、俺悔しくて、ある看護士さんに愚痴ったんだ。この病院の看護士さんは皆先生が好きなんだねって。そしたら、その人曰く、確かに前はそうだったんだけど先生が結婚してからはそうでもなくなったって言うんだよ」

 そう言って翔太は清司郎を冷やかすような目で見た。
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