エリート心臓外科医の囲われ花嫁～今宵も独占愛で乱される～
「八神先生が結婚したってだけでも皆がったりだったのに、あまりにも奥さんに夢中だから、さすがにもう見込みはないって皆わかったらしくて、最近は人気が落ち始めたみたいだよ。俺、八神先生みたいなスーパーイケメンを夢中にさせるなんてどんなにかわいい奥さんなんだろって思ってたけど、千春ちゃんなら納得だな」

「翔太……」

　清司郎がため息をついた。
「お前普段から無駄話ばっかりしてるんだな。余裕があるみたいだからもっとリハビリの時間を増やしてやるよ」　

　清司郎がじろりと翔太を睨み、翔太が「げ！」と声をあげる。
　ユキの母親がくすくすと笑いだした。
　どうやら清司郎は医師として信頼されているだけではなく、患者たちと、こうやって気楽に言葉を交わし合い親しく付き合っているようだ。
　こんな風になんでも言い合える仲ならば、患者側は些細な疑問も体調の変化も気軽に相談することができるだろう。
　彼が病院内で人気の医師なのも納得だった。
　一方で、千春の方は翔太の話にますます困惑してしまっていた。
　清司郎が病院内で注目を集める存在だということは知っている。
　それはわかっているけれど、でもだからといって……。

「む、夢中だなんて、なんでそんな噂になるのかな……？」

　千春の呟きに、今度はユキが声をあげた。

「皆、見てるからだよ！」

　そして嬉しそうに窓の外を指差した。

「ほら、ここから見えるの！　先生と千春ちゃんが仲良くお昼ご飯を食べているとこ！」

　つられて窓を覗き込んで、千春は絶句してしまう。
　窓からは自宅の庭のベンチが丸見えだった。

「よくあそこで一緒にご飯を食べているでしょう？」

　無邪気に尋ねるユキの隣で母親がくすくす笑った。
　元気に日常生活を送れるようになってからも、千春は午後の庭の散歩を続けている。
　清司郎の昼休みに合わせて、ふたりでランチを取るためだ。
　もちろん忙しい彼だから毎日というわけにはいかないが、夜に早く帰ってこられる日が少ないからこそ、千春はその時間を大切にしていた。
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