エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 清司郎は千春が夜遅くまで起きて彼を待つことを絶対に許してはくれない。
 唯一その時間だけがまともに話ができるひとときだという日もあるくらいだった。
 でもまさかそれを、病院中の人たちに見られていたなんて!
 どうやら離れの改装のためにコナラの木を切ったことで庭が丸見えになってしまったようだった。

「どうしよう……清君」

 愕然として千春は清司郎に助けを求める。
 彼もきっと困惑しているに違いない。
 なにかうまい言い訳を……。
 ところが意外なことに清司郎の方は平然として窓の外を眺めている。それどころかその表情はなにやら満足気にすら思えるほどだった。
 この様子、もしや彼は……。 

「確信犯だよ、千春ちゃん」

 翔太が言い切った。

「先生は、病院からお庭が見えるのをわかっていて、黙っていたんだよ」

「ええ⁉︎ まさか、だって、そんなことないよね?」

 千春のその問いかけに、清司郎はしれっとして口を開いた。

「俺の個室は五階だからな。五階からもよく見える」 

「ええ⁉︎ ど、ど、どうしておしえてくれなかったの⁉︎」

 千春は悲痛な声をあげる。
 それに翔太が答えた。

「牽制ってやつだよ、千春ちゃん。千春ちゃんボランティアで病院へよく来るんでしょ。だからほら、変な男が寄り付かないように。俺の女だぞって。スーパーイケメンのくせに八神先生案外余裕がないだね。千春ちゃんかわいそうに……。こんな嫉妬深い旦那絶対にやばいよ。悪いことは言わないから、こんなおっさんはやめて俺みたいなぴちぴちの……」

「翔太……」
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