エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
清司郎がため息をついてまた翔太に手を伸ばそうとする。
「わー! 先生、嘘、嘘!」
翔太が松葉杖でよたよたと逃げた。
そんなふたりのやり取りに、千春はもはやなにも言えなくなってしまう。
どこまでが本当で、どこからが冗談なのかさっぱりわからなかった。
ユキがニコニコして清司郎の白衣の裾を引っ張った。
「ねえ先生、今日も千春ちゃんと一緒にご飯を食べるの?」
清司郎がユキに向かって微笑んだ。
「実はそうなんだよ、ユキちゃん。今日はユキちゃんとここで会うって聞いてたから迎えに来たんだよ」
「やっぱりラブラブだね」
「まあね。ユキちゃん、申し訳ないけど、そろそろ千春ちゃんを借りてもいいかな?」
「どうぞ、どうぞ!」
ユキが張り切って千春の背中を押した。
「千春ちゃん、またね!」
でも千春はそれに素直に頷くわけにはいかなかった。
この状況で、仲良くふたりでこの場を去れるほど千春のハートは強くない。
「きょ、今日はひとりでご飯を食べようかな……」
そう呟いてすすすと清司郎から距離を取る。
だがそれは清司郎が許してくれなかった。
「なに言ってるんだ、ダメに決まってるだろう。ほら、俺の休憩時間がなくなるじゃないか。早く行くぞ」
千春の手をしっかり握ってそんなことを言う。
ニコニコしながら手を振るユキ、くすくす笑うユキの母親、呆れたようにため息をつく翔太に見送られて、千春は引きずられるように談話室を後にした。
「もう、清君ったら信じられない!」
千春はぷりぷりして、お弁当の卵焼きをパクリと口に入れる。
隣では清司郎が、素知らぬ顔で千春と同じメニューのお弁当を食べていた。
さっきふたりは談話室から庭へやってきた。
いつものようにベンチに座ろうとする清司郎を千春が慌てて止めて、あれこれ言い合いをしてから、結局ベンチを少し移動させることで話がついた。
緑の葉が陰を落とす大きなハナミズキの木の下で、千春はようやく安心してお弁当の包みを開けることができたのだ。
一方で、清司郎に対する苦情は止まらない。
なにせ彼は千春がどんなにお願いしても談話室から庭に着くまでの間、繋いだ手を離してくれなかったのだ。
エレベーターで一緒になった看護士は清司郎に『おつかれさまです』と言った後、くすくすと笑っていた。
降りぎわには、『ごゆっくり』とまで言われたのだ。
もう千春は顔から火が出るほど恥ずかしかった。
「わー! 先生、嘘、嘘!」
翔太が松葉杖でよたよたと逃げた。
そんなふたりのやり取りに、千春はもはやなにも言えなくなってしまう。
どこまでが本当で、どこからが冗談なのかさっぱりわからなかった。
ユキがニコニコして清司郎の白衣の裾を引っ張った。
「ねえ先生、今日も千春ちゃんと一緒にご飯を食べるの?」
清司郎がユキに向かって微笑んだ。
「実はそうなんだよ、ユキちゃん。今日はユキちゃんとここで会うって聞いてたから迎えに来たんだよ」
「やっぱりラブラブだね」
「まあね。ユキちゃん、申し訳ないけど、そろそろ千春ちゃんを借りてもいいかな?」
「どうぞ、どうぞ!」
ユキが張り切って千春の背中を押した。
「千春ちゃん、またね!」
でも千春はそれに素直に頷くわけにはいかなかった。
この状況で、仲良くふたりでこの場を去れるほど千春のハートは強くない。
「きょ、今日はひとりでご飯を食べようかな……」
そう呟いてすすすと清司郎から距離を取る。
だがそれは清司郎が許してくれなかった。
「なに言ってるんだ、ダメに決まってるだろう。ほら、俺の休憩時間がなくなるじゃないか。早く行くぞ」
千春の手をしっかり握ってそんなことを言う。
ニコニコしながら手を振るユキ、くすくす笑うユキの母親、呆れたようにため息をつく翔太に見送られて、千春は引きずられるように談話室を後にした。
「もう、清君ったら信じられない!」
千春はぷりぷりして、お弁当の卵焼きをパクリと口に入れる。
隣では清司郎が、素知らぬ顔で千春と同じメニューのお弁当を食べていた。
さっきふたりは談話室から庭へやってきた。
いつものようにベンチに座ろうとする清司郎を千春が慌てて止めて、あれこれ言い合いをしてから、結局ベンチを少し移動させることで話がついた。
緑の葉が陰を落とす大きなハナミズキの木の下で、千春はようやく安心してお弁当の包みを開けることができたのだ。
一方で、清司郎に対する苦情は止まらない。
なにせ彼は千春がどんなにお願いしても談話室から庭に着くまでの間、繋いだ手を離してくれなかったのだ。
エレベーターで一緒になった看護士は清司郎に『おつかれさまです』と言った後、くすくすと笑っていた。
降りぎわには、『ごゆっくり』とまで言われたのだ。
もう千春は顔から火が出るほど恥ずかしかった。