エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 木々の間から見える八神病院を千春は窓際に立って見つめている。
 小さい頃は、早く退院したい、病院なんてつまらないと思っていた。夜にこっそり抜け出そうとしたこともあったくらいだ。
 でも両親が亡くなって叔父の家に引き取られてからは、それがまったく逆になった。
 叔父も叔母もただ千春を義務として引き取っただけだから、家で優しくしてもらった記憶はない。それどころか、いつも彼らのひとり娘、絢音(あやね)と差をつけられて惨めな思いをしていた。
 同い年の絢音は、新しい服や靴、おもちゃを買ってもらったと言っては千春の部屋へ来て自慢をした。

『またママが外商を呼んだのよ。これ、いいでしょう? ま、病院にしか行かないあんたには必要ないだろうけど』

 千春がそれをうらやましく思わなくなってからも、なにか面白くないことがあると部屋へ来て憂さ晴らしをするように嫌がらせをされる日々だった。
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