エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 千春が暗い目で窓に映る自分を見つめた、その時。
 コンコンと扉をノックする音がした。

「どうぞ」

 振り返って応えると、白衣姿の清司郎が入ってきた。
 千春の胸がドキンと鳴る。てっきり小夜だと思ったのに。
 朝の出来事が頭に浮かんだ。

「顔色は悪くないな。昼ごはんはちゃんと食べたか」

 またなにか言われるのだろうかと警戒する千春に、清司郎が歩み寄り健康状態を確認してゆく。
 今日一日は胸が苦しくなることも頭がくらくらすることもなかった。千春の様子に、清司郎が安堵したように頷いた。

「着替えを用意したから、明日からは気分がよければ寝てなくてもいい。なにか部屋でしたいことがあるなら、小夜さんに言え。準備してくれるから」

 医者と患者、あるいは幼なじみ、そんな間柄でしかない千春に対して彼はとても親切にしてくれている。でもそれを千春は素直に受け止めることができなかった。
 寝ていなくてもいいのなら、どうして家に帰らせてくれないのか。
 千春は返事もせずに黙り込む。
 昨日からの彼の行動は不可解なことが多すぎる。
 清司郎が千春のその疑問に答えるように口を開いた。

「千春、退院はなしだ」

「え……?」

「今日からお前はここに住め」

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