エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
「家に帰して。帰してくれないなら自分で帰るんだから!」

 千春は首を振って、扉の方へ歩き出す。
 いくら主治医だからといって、根拠のない入院命令に従う義務はない。
 だがその千春の腕を清司郎が掴んだ。

「ダメだ、千春! 帰ったら好きでもない男と結婚させられるんだぞ!」

「それがなに⁉︎」

 千春は振り返った。

「言ったでしょう? 私に自由はないの! 愛も恋も必要ない。どうせ今までだって誰も好きになったことがないんだもの! 結婚なんて誰としたって同じだわ」

 そう言い放ち彼を睨むと、清司郎が低い声で確認した。

「……金のために、好きでもない男と結婚をするんだな」

 残酷な言葉。
 でも千春はそれを心地よく感じた。
 少なくとも、さっき彼に押し付けられた理想よりは今の自分にぴったりだ。
 誰と結婚したって千春の人生、そうたいして変わらない。
 今までと同じように心を凍らせていればいいだけなのだから。

「……わかった」

 清司郎が目を閉じて呟いた。
 千春はホッと息を吐く。
 どうして彼がここまでしてくれようとしたのか、それについては不明だが、納得してもらえたのならそれでいい。
 ようやく家に帰してもらえる。
 でもその千春の期待は次の瞬間に裏切られた。
 清司郎がゆっくりと目を開いた。

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