エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
「千春、俺と結婚しろ」

「は……?」

 その言葉に、千春は掠れた声を漏らす。
 昨日からの彼の言動の中で一番意味不明な発言だった。
 国内屈指の優秀な心臓外科医である彼が、いったいどうしてしまったのだろう。
 わけがわからずに首を傾げる千春の視線の先で清司郎がもう一度、繰り返した。

「俺と結婚しろ」

「清君……なに言ってるの?」

「お前の医療費は俺が払う」

「は? ……え、い、医療費を⁉︎ ど、どうして……?」

 またもや意味不明なことを口にする清司郎に、もう千春の頭はついていけない。
 ただ、唖然とするのみである。

「お前の医療費は俺が結城氏に払うよ。そしたらお前はあの家から出られるんだろう?」

「そ、それはそうだけど。でも……」

 たしかに医療費をすべて払えば、千春をあの家に縛りつけている理由はなくなる。
 家を出ることだってできるだろう。
 でもだからって……。

「清君にそこまでしてもらう理由がないわ……」

 千春はふるふると首を振る。彼が、昨日からの一連の出来事で、千春に同情をしてくれているのはわかる。幼なじみ、あるいは主治医として千春の境遇を心配してくれていることも。
 でもだからといって、千春の医療費は代わりに支払ってあげるなどと言えるような金額ではないのだ。
 清司郎が千春の両肩を掴み、優しく揺さぶった。

「だから結婚するんだよ。妻にかかった医療費を夫が払うのは当然だ。結城氏もそれで納得するだろう」

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