エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 それはそうかもしれないが、千春は納得できなかった。

「でも清君。清君はどうしてそこまでして……」

「いいか、千春」

 清司郎が真正面から千春を見る。射抜くようなその視線に千春の胸がどきりと鳴った。

「お前になにかあったら俺のキャリアに傷がつく」

「え……」

 千春の口から声が漏れた。

「お前の手術は国内初の成功例だ。近々世間に発表されることになっている。この成功が国内に知れ渡れば、うちの病院は心臓病国内一の座を磐石なものにする。わかるな」

 清司郎の話に千春は黙って頷いた。
 千春の病気はずっと根治できないと言われていた。
 心臓病で最先端をいく八神病院に転院してもそれは変わらなかった。
 でも何年か前に、新しい治療法がアメリカで始まって清司郎はそれを学ぶために留学をしたのだ。
 彼がその技術を学び帰国して成功すれば、日本にいるたくさんの患者にとって、八神病院は希望の光となると多くの人に期待されて。
 ここまで聞いて、ようやく千春は彼がなぜここまで自分の見合い話にこだわったのかがわかった。

「お前になにかあったら、すべてが振り出しに戻るんだ」

 つまり彼は千春自身を心配しているのではなく、自分が執刀した手術例が失敗に終わることを心配しているのだ。

「結城氏がお前の体調をちゃんと考えているとは到底思えない。一週間前に退院したばかりのお前と見合いをしようという相手方もだ」

< 26 / 193 >

この作品をシェア

pagetop