エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 そう言って清司郎はため息をついた。

「だから、お前は俺が預かることにする。お前には絶対に元気でいてもらわなくてはならないからな。うちの病院の命運がかかっているんだ。そのためならお前にかかった医療費なんて安いもんだ」

 千春はもう彼に反論しなかった。
 結局そうなのだという諦めにも似た気持ちが胸の中に広がってゆく。
 千春の人生は千春の意思とは関係なく誰かに決められるものなのだ。常に病気とセットなのだから。

「お前はさっき金のために好きでもない男と結婚すると言った。じゃあ俺とも結婚できるはずだ」

「お金のために……」

 清司郎が頷いた。

「そうだ。お前はずっと医療費を負担している結城氏の言うことを聞いて生きてきたんだろう? これからは俺の言うことを聞け、俺がお前の医療費を支払うんだから」

 まるで買われるみたいだと千春は思う。
 いつもいつも大事なことを決める時は、叔父や周りの人が決めて、千春の気持ちだけが置いてけぼりだ。
 今回も清司郎と叔父がそうすると決めたなら、それに逆らうことなどできない。
 でももはやそれに怒りを感じる千春ではなかった。
 どうにでもなれ、と心の中で呟いた。

「千春、わかったな」

 やや高飛車に清司郎は言う。
 千春は背の高い彼を見上げる。
 そして黙ったまま、ゆっくりと頷いた。
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