エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
「走ったのか? 呼吸が乱れている。顔色も悪い」

 何も答えない千春に詳しく事情を尋ねるより先に、清司郎は千春を落ちないように階段のそばから移動させて健康状態を確認していく。
 大きな手が千春の首元に触れた、その時。

「お嬢さま!」

 呼びかけられて、千春はびくりと身体を揺らした。
 声の主は結城家に勤める者の中でもっとも恐れられていれる澤田という年配の女性だ。
 叔父に言われて千春の行動を厳しく制限するのはいつも彼女だった。
 その彼女に見つかったら確実に叔父のところへ連れ戻されてしまう。
 万事休すだった。

「千春さま、いったいどういうおつもりです? 勝手は許されませんよ!」

 階段を上りながら、澤田が千春を叱責する。
 千春は震える唇を開いた。

「で、でも……! 私、今日がお見合いなんて聞いていなかったわ!」

「見合い……?」

 清司郎が呟いた。
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