エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 大林先生とはかつて官房長官を務めたこともある政界の実力者、衆議院議員大林大輔(だいすけ)だ。ユウキ製薬と新薬の承認について関わりが噂されている。 
 彼の次男である夏彦は、高校の同級生で清司郎も知っている。
 ねっとりとした目の陰気な男だ。それほど関わりがあったわけではないが、あまり好きにはなれなかった。
 奴が、退院したばかりでまだ体調が万全ではない千春との見合いを急いだのだ。見舞いに来ていたというならば、千春が命に関わるような手術に臨んだということは承知していたはずなのに……。
 清司郎の胸に黒い怒りが広がった。

『かわいそうだが、どうにもならんよ』

 康二がやるせないというように目を閉じた。

『我々主治医にしてやれることなど限られているからな』

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