エリート心臓外科医の囲われ花嫁～今宵も独占愛で乱される～

「い、いきなりお見合いなんて言われても、困るわ！」

　千春は首を振って主張した。
　澤田の小言は千春にとっては日常茶飯事で、彼女に逆らえないことはわかっている。だから普段なら言い返したりはしない。
　そんなことをしても無駄だからだ。
　でも今は別だった。
　結婚という一生の出来事を、こんな風にまったく自分の意志に関係なく、急に決められてしまうなんてあんまりだ。

「不安に思われることなどありませんよ、千春さま。お相手はあの大林先生の御子息大林夏彦（おおばやしなつひこ）様ではありませんか。千春さまも何度もお会いになったことがあるでしょう。ほら、行きますよ」

　階段を上りきった澤田の手が千春の方へ伸びてくる。
　千春は後ずさった。

「ま、待って……！　せめて少しだけでも、考える時間をちょうだい。だってこんな、いきなり……！」

「ダメです！　旦那さまの顔に泥を塗るおつもりですか？　多大なる恩を受けておきながらわがままは許されませんよ。さぁこちらへ」

　そこへ。