エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
『あんた、まだ九九も覚えてないの? もう三年生なのに。バッカじゃない』
半分開いたドアの向こうには少女がふたり。
ひとりはピンク色のワンピース、もうひとりはパジャマ姿でベッドの中だった。
『こんなもの、もう三年生は使わないのよ。貸して、私が捨てといてあげる』
嫌味な声でそう言って、ピンク色の少女がパジャマの少女から単語帳のような物を取り上げる。
『あ! 返して! 私の九九カード!』
少女がベッドから悲痛な声をあげた。
『テストに間に合わなくなっちゃう。お願い! あやちゃん』
一生懸命懇願する少女をあやちゃんと呼ばれた少女が鼻で笑う。
『どうせテストなんて受けられないよ。あんたなんか病院から一生出られないんだから』
清司郎はムカムカする気持ちを抱えたままふたりから目を逸らし、その場を後にした。
そのパジャマ姿の少女が、結城千春という名だと知ったのは次の日、課題の続きで訪れた医院長室だった。
『結城千春ちゃんだな』
ふたりのやり取りを口にした清司郎に、父は渋い顔になった。
『ユウキ製薬の社長さんの姪御さんだ。千春ちゃんの両親が一年前に亡くなったから、社長がお引き取りになったんだよ』
『……いじめられてるように見えたけど』
『そのもうひとりの女の子は……社長の娘さんじゃないかな。確か同い年だったはずだ』
半分開いたドアの向こうには少女がふたり。
ひとりはピンク色のワンピース、もうひとりはパジャマ姿でベッドの中だった。
『こんなもの、もう三年生は使わないのよ。貸して、私が捨てといてあげる』
嫌味な声でそう言って、ピンク色の少女がパジャマの少女から単語帳のような物を取り上げる。
『あ! 返して! 私の九九カード!』
少女がベッドから悲痛な声をあげた。
『テストに間に合わなくなっちゃう。お願い! あやちゃん』
一生懸命懇願する少女をあやちゃんと呼ばれた少女が鼻で笑う。
『どうせテストなんて受けられないよ。あんたなんか病院から一生出られないんだから』
清司郎はムカムカする気持ちを抱えたままふたりから目を逸らし、その場を後にした。
そのパジャマ姿の少女が、結城千春という名だと知ったのは次の日、課題の続きで訪れた医院長室だった。
『結城千春ちゃんだな』
ふたりのやり取りを口にした清司郎に、父は渋い顔になった。
『ユウキ製薬の社長さんの姪御さんだ。千春ちゃんの両親が一年前に亡くなったから、社長がお引き取りになったんだよ』
『……いじめられてるように見えたけど』
『そのもうひとりの女の子は……社長の娘さんじゃないかな。確か同い年だったはずだ』