エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 庭のベンチに腰を下ろして清司郎は過去を思い出し、風に揺れる木の葉を見つめていた。
 長い道のりだったが、なにもかもうまくいった。
 千春と清司郎が出会ってから十一年後、アメリカで治療法が確立し、それを学ぶため清司郎は渡米した。
 そしてそれを日本に持ち帰ったのだ。
 なのに……。
 清司郎は右手で拳をつくり奥歯を噛み締める。
 帰ってきてみれば、千春は別人のようになっていた。
 将来に対する希望はどこか遠くへ捨てさって、まるでただ息をするだけの人形のようだった。手術ができると聞かされても、ただ『そう』と呟いて目を伏せただけだったのだ。
 そしてそれは手術が成功した後も変わらなかった……。
 千春をそうさせたもの、彼女から光を奪ったものの正体を、数日前に清司郎は知った。
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