エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
「通常の日常生活だってまだ注意が必要な状態です。それなのに、身体を締め付ける着物なんか着せて、見合いとは……どういうことか、説明してください」

 静かだが、明らかに怒りを含んだ問いかけに、澤田があわあわと口を開く。

「も、もちろん。千春様の体調をみながらのお話です。堅苦しいものではなくお部屋でゆっくりと……」

 その時。

「千春」

 また別の声が千春を呼んだ。
 今日の見合いを計画した千春の叔父結城芳人(よしひと)だった。
 階段をゆっくりと上ってくる。
 千春は無意識のうちに、清司郎のスーツの袖をギュッと握った。

「わがままは許さんぞ。今すぐに部屋へ戻りなさい。先方が到着される前に、早く」

 芳人が冷酷に言い放つ。
 それを清司郎が止めた。

「待ってください、結城さん。これはいったいどういうことですか」

 千春を庇い厳しい表情で芳人と対峙する。

「あなたは……」

 そこではじめて、芳人が清司郎に気が付いた。
 そして不味いところを見られたと一瞬視線をさまよわせる。でもすぐに、貼り付けたような笑みを浮かべた。
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