エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
読みたい本があるのなら、どれだけ古くとも探し出していくらでも買ってやる。
空いている部屋のうちのひとつを千春専用の書庫にしたっていい。
いやその前に、彼女が自分で本を購入できるように携帯を一台契約して……。
でもそこで、目を輝かせながら清司郎の携帯を覗き込んでいた彼女を思い出し、清司郎はまたため息をついた。
あの時、桃色に染まる頬とすぐ近くから感じる甘やかな香りに、一瞬、自分の中のなにかがぐらりとなった。
清司郎は考え込む。
千春との結婚は、あの結城芳人から法的に彼女を守るために、必要だった。
常識とはかけ離れた方法だが、結果的に一番有効な手段だった。
千春を連れ帰った夜、実は結城芳人は病院に来た。受付の職員に、"自分は千春の家族だ。千春を出せ。場合によっては訴える"と迫ったのだ。
確かに清司郎と千春が主治医と患者というだけの間柄なら、千春の体調が整えば清司郎が彼女を止めておく権限はない。場合によっては誘拐だと言われても仕方がない状況だ。
だがそれも、ふたりの間の婚姻関係がすべて解決してくれた。妻が夫の家に住むのは当然なのだから。
そして清司郎が芳人に千春との結婚を告げてから、彼は病院には来ていない。
彼女を守るための便宜上の婚姻関係。
この結婚に、それ以上の目的はない。
清司郎は千春を深く愛しているが、まだそれを彼女に告げるつもりはなかった。
とにかく今は治療が最優先。
彼女に愛を告げるのは、彼女にそれを受け止められるだけの準備が整ってからだと心に決めている。
それなのに。
不覚にも、さっき清司郎は彼女を邪な気持ちで見つめてしまっていた。さらさらした黒い髪から覗く白い小さな耳から目が離せなくなっていた。
息を吐いて目を閉じると、瞼の裏にさっきの千春の笑顔が浮かぶ。
朝や昼は大丈夫だ。
すぐ後に仕事が控えていて気が張っているし、小夜の目もある。
「でも夜はまずいな」
呟いて、清司郎はまたため息をついた。
空いている部屋のうちのひとつを千春専用の書庫にしたっていい。
いやその前に、彼女が自分で本を購入できるように携帯を一台契約して……。
でもそこで、目を輝かせながら清司郎の携帯を覗き込んでいた彼女を思い出し、清司郎はまたため息をついた。
あの時、桃色に染まる頬とすぐ近くから感じる甘やかな香りに、一瞬、自分の中のなにかがぐらりとなった。
清司郎は考え込む。
千春との結婚は、あの結城芳人から法的に彼女を守るために、必要だった。
常識とはかけ離れた方法だが、結果的に一番有効な手段だった。
千春を連れ帰った夜、実は結城芳人は病院に来た。受付の職員に、"自分は千春の家族だ。千春を出せ。場合によっては訴える"と迫ったのだ。
確かに清司郎と千春が主治医と患者というだけの間柄なら、千春の体調が整えば清司郎が彼女を止めておく権限はない。場合によっては誘拐だと言われても仕方がない状況だ。
だがそれも、ふたりの間の婚姻関係がすべて解決してくれた。妻が夫の家に住むのは当然なのだから。
そして清司郎が芳人に千春との結婚を告げてから、彼は病院には来ていない。
彼女を守るための便宜上の婚姻関係。
この結婚に、それ以上の目的はない。
清司郎は千春を深く愛しているが、まだそれを彼女に告げるつもりはなかった。
とにかく今は治療が最優先。
彼女に愛を告げるのは、彼女にそれを受け止められるだけの準備が整ってからだと心に決めている。
それなのに。
不覚にも、さっき清司郎は彼女を邪な気持ちで見つめてしまっていた。さらさらした黒い髪から覗く白い小さな耳から目が離せなくなっていた。
息を吐いて目を閉じると、瞼の裏にさっきの千春の笑顔が浮かぶ。
朝や昼は大丈夫だ。
すぐ後に仕事が控えていて気が張っているし、小夜の目もある。
「でも夜はまずいな」
呟いて、清司郎はまたため息をついた。