エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
「ダメだって。図書館に入ったらお前興奮するだろ。まずは息を整えてから、ほら水を飲め」

 千春はしぶしぶ足を止めて、渡されたミネラルウォーターをひと口飲む。
 冷たい水は身体に染み渡るようで美味しかったが、やっぱり早く行きたかった。

「もう……清君、過保護なんだから」

 思わずそう呟くと、清司郎が眉を上げた。

「千春、お前なぁ……」

「だって。先生は図書館までは坂道だけど、胸が苦しくならなければいいって言ってくれたわ」

 図書館まで歩いて行くと言うふたりに、康二は賛成してくれた。
 今の千春の体力なら、問題はないはずだと。
 それなのにその意見を清司郎は一蹴した。

「今の主治医は俺だ。お前のことは俺が決める」

「でももうすぐそこなのに!」

 千春も負けじと言い返して、あれこれやり合う。すると不意に声をかけられた。

「あら、……八神先生?」

 言い合いをやめて振り返ると、年配の女性が笑みを浮かべて立っていた。

「やっぱり。先生、こんにちは」

「あ、こんにちは」

 清司郎が答える。
 千春も隣で頭を下げた。

「図書館へ行かれるの?」

「そうです」

 女性からの問いかけに頷いて、清司郎は千春に向かって彼女を紹介した。
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