エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
「清君?」

 千春は首を傾げる。
 すると彼は咳払いをして「まぁ、そうなるか」と呟いた。そして少し考えてから千春の隣に座った。

「それで、どうしたんだ?」

 優しく尋ねられて、千春は手の中の紙を清司郎に差し出した。

「これを……やってみたくて」

 清司郎が受け取って、紙の内容に目を通す。

「読み聞かせの会……倉橋さんのサークルか」

 千春は黙って頷いた。
 少し前に図書館でもらったチラシである。
 あれから千春はずっとこのことについて考えていた。
 八神総合病院の小児病棟にはたくさんの子供たちが入院している。中には昔の千春のように長期間入院している子もいるのだ。
 そんな子にとっては、本が大きな支えになる。それは千春が誰よりもよくわかっていた。
 本を通して、外の世界を知り、実際にはできない経験をした気分になる。
 本がたくさんのことをおしえてくれる。
 まだ自分で字を読めない子たちにとっては、読み聞かせの会がどれほどの楽しみか。できることなら、千春もサークルに参加して、そんな子たちに本を読んであげたいと思ったのだ。

「本当は、こんなことしてる場合じゃないっていうのはわかっているんだけど……」

 千春は小さな声でそう言ってうつむいた。
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