エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
「お前は元気になることだけを考えろ。間違っても金を返そうなんて思うんじゃない。そんな考えに囚われてお前が無理をするなら本末転倒だ。わかるな?」

 千春は清司郎の目をジッと見つめて迷いながらもゆっくりと頷いた。
 それでいいとはまだ思えなかったけれど。

「よし」

 清司郎が頷いた。

「この約束を守れるなら、サークル活動はやってもいい」

「え? ……本当に?」

 千春は目を瞬かせる。

「ああ。そろそろ千春も少しずつ外へ出た方がいいと思っていたからな。ちょうどいい。倉橋さんのサークルの読み聞かせは、もう何年も続けてくださっていて今や小児病棟の子供たちにとっては欠かせない楽しみなんだよ。千春が参加してくれるなら俺にとってもありがたい」

「嬉しい‼︎」

 サークル活動ができそうなこと、そしてそれをありがたいと言ってくれた彼の言葉に、千春は飛び上がって喜んだ。

「ありがとう、清君‼︎ 清君って昔からなんだかんだいって優しいよね!」

 感謝の言葉と素直な気持ちが千春の口から飛び出して、清司郎が頭をかく。

「なんだかんだってなんだよ」

 千春はわくわくして清司郎から返されたチラシにまた目を落とした。
 さっそくこの電話番号に連絡をしてみよう。
 今日はもう遅いから明日の午前中にでも時間を見つけて。
 ああでもなんだか待ちきれない、早く明日にならないかな。
 そんなことを考えてチラシの隅々にまで目を通していると、ふいに頬が大きな温もりに包まれた。
< 69 / 193 >

この作品をシェア

pagetop