エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
近づく距離

千春の戸惑い

「経過は順調だ。ただ手術の影響でここの数値がまだ少し低い。まぁ問題ない範囲ではあるが……」

 八神総合病院の心臓外科の診察室で、清司郎が検査結果のデータを見ながら説明をする。千春はそれを不思議な気持ちで見つめていた。
 今日は千春の精密検査の日だった。
 検査を受けて、医師の話を聞く。もう何十回と繰り返したこの流れを、千春はさまざまな思いで乗り越えてきた。
 どうかいい結果でありますようにと願ったのは遥か遠い昔のこと。
 結果なんてどうでもいい、むしろ悪い方がいいと思うこともあった。自分の身体のことだとしても自分には関係ない、どうせ自由には生きられないのだから、と。
 でも今、術後の経過が順調だということを心から喜んでいる自分がいる。
 やりたいこと、読みたい本が頭に浮んで、わくわくと胸が踊るのを止められなかった。
 なにもかも目の前の清司郎のおかげなのだ。
 医師としての彼のキャリアのためにも経過が順調でよかったと思う。今の千春が彼の役に立てることは、それくらいしかないのだから。
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