エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
「千春?」

 検査結果について丁寧に説明をする清司郎をぼんやりと見つめていた千春は、呼びかけられてハッとする。
 慌てて「はい」とだけ答えてうつむいた。
 ここ最近は彼の姿を見るだけで、ドキドキが止まらなくなってしまう。白衣姿のこんなにカッコいい彼は、はっきりいって目に毒だった。

「無理をしない程度の外出はいいが、激しい運動はしないように」

 清司郎がてきぱきと話を進めていく。
 千春はうつむいたまま、また「はい」と答えた。
 はじめて彼とキスをしたあの夜から一週間が過ぎた。
 千春の気持ちはまだ整理がつかないままだった。
 普通に生活していても不意にあの時のことが頭に浮かんで、頬が熱くなってしまう。ましてやこうやって彼と顔を突き合わせるとなると、どうしても挙動不審になってしまうのだ。
 千春は、カルテになにかを打ち込んでいる清司郎の横顔を上目遣いにチラリと見る。
 彼の方は、少なくとも千春が見る限りはいつも通りの彼だった。
 まるであのキスのことなどなかったかのように。
 あのキスについて、彼はなにも言わなかった。
 だから千春は、わからないままだ。
 いったいどうして彼は突然キスをしたのだろう。
 なにがそうさせたのだろう。
 形だけだとしても夫婦という関係ならあのくらいはあたりまえなのだろうか。

「じゃあ、次はまた一カ月後。帰りに予約を取って帰って。……帰りに小児病棟に寄るんだろ?」
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