エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 清司郎は、くるりと椅子を回して天井を仰いだ。
 ついさっきまでここにいた千春は、身の置き所がないといった様子でおたおたしていた。
 頬を染めて。
 目を潤ませて。
 今日に限らず、ここ一週間の彼女は、ずっとそんな感じだ。
 無理もない、と清司郎は思う。
 まったく恋愛経験もない彼女にしてみれば、突然キスをされるなど、晴天の霹靂。なにが起こったのかわからないといったところだろうから。
 肝心の清司郎は、それについて彼女に説明するための言葉をまだ持ち合わせていなかった。
 お前が好きだからキスをしたのだと、そのまま事実を告げる決心はまだつかない。
 それが彼女にとっていいことなのかどうかわからないからだ。
 そしてそんな状況では、清司郎の方も普段通りに振る舞うのがやっとだった。
 今のところの千春の反応を見る限りは、それほど嫌がっているようには思えない。
 むしろその逆だと思うこともあるくらいだが、だからといってそれが清司郎と同じ類の気持ちかどうかといえば、また話は別だろう。
 ……とはいえ、ずっとこのままうやむやにしておくわけにはいかない。
 清司郎は目を閉じて、深い深いため息をついた。
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