エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 途方に暮れたように呟いて、清司郎が黙り込む。
 祈るような気持ちで、千春は彼の言葉を待った。
 無理を言っているのはわかっている。
 とてもこれが正解だとは思えない。
 でも千春にはほかに術がないのだ。
 しばらくの沈黙。
 頑なな態度を崩さない千春に、清司郎が小さく息を吐いた。
 ——そして。

「わかった」

 低い声とともに、千春の顎に手が添えられる。

「あ」

 ぐいっと上を向かせられると、そこにあるのは眉根を寄せた清司郎の瞳。
 困惑と諦め、そして千春の知らないなにかが混ざり合った複雑な色をしている。

「目を閉じて」

「ん……!」

 ……二度目のキスは、罪の味。
 彼の優しさにつけこんだ、卑怯なキス。
 それでも千春の身体は熱くなった。
 唇から伝わる甘い痺れが全身を駆け巡り、千春の中を彼への想いでいっぱいにしてゆく。
 愚かだ、と千春は思う。
 本当はこんなことに、なんの意味もないのに。
 ほん少し彼に触れられただけで、こんなにも夢中になってしまう自分は、なんて愚かなのだろう。
 ああでも、きっとこれが恋なのだ。
 卑怯でも、無意味でも、なんでもいいから愛おしい人に触れてほしい。
 少しでも近くに感じたい。
 きっとこれが、恋をするということなのだ。

「あ……」
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