エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 わずかに離れた唇から、千春は熱い吐息を漏らす。
 清司郎が射抜くような視線を千春に向けている。

「千春、口を開けて」

 唐突な彼の言葉に、千春はすぐには反応できない。潤んだ瞳を瞬かせて小さく首を傾げた。

「く……ちを……?」

「そう。……こうやって」

 清司郎の親指が千春の唇をやや強引に割る。

「あ……」

「本当のキスをおしえてやる」

 そしてそこを熱い唇で塞がれた。

「んんっ……!」

 入り込む彼の熱。
 はじめての衝撃に、千春は背中をしならせる。
 反射的に身を引こうとするけれど、うなじに差し込まれた大きな手と、腰に回された力強い腕に阻まれた。
 甘く縛り付けられたまま、容赦なく与えられる未知の感覚に、千春は身を震わせた。

「あ、んん……!」

 口の中を余すことなく触れられて、漏れ出る声を止められない。

「千春、息を止めるな」

「ん、……はぁ」

「……そう、上手だ」

 息継ぎの合間の、彼の言葉を道しるべに千春は無我夢中ではじめての行為を受け入れる。まるで身体の中心を直接刺激されているような感覚だ。
 頭の中で、切ないなにかが弾け飛ぶ。

「ふあ……、あ……!」

 静かな部屋に響く秘密めいたふたりの息遣いが、千春の耳を真っ赤に染めあげてゆく。
 知らなかった。
 口の中を触れられるのがこんなに気持ちいいなんて。
 こんなキスがあるなんて。
 柔らかい彼の熱が千春の中を縦横無尽に暴れ回る。いつしか千春は夢中になって、彼の動きに応えはじめる。
 頭の中は彼の香りでいっぱいだった。

「千春……」
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