エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~

清司郎の決意2

 千春を部屋へ送り返し、自室に戻りドアを閉めて、清司郎はベッドの上に横になる。
 目を閉じて長い長い息を吐くと、自分の中の衝動がようやく少しだけ落ち着いた。

 またやってしまった。

 いくら千春に頼まれたからといっても、あそこまですることはなかったのに。
 もしあの時小夜が来なかったら、どうなってしまっていたか、自分でもわからないから恐ろしい。
 最後は急かすように部屋へ帰すのが精一杯だった。
 医師という職業柄、清司郎は常日頃から冷静であることを心がけている。
 一時の感情に流されず常に最善だと思う決断を下す。
 自分にはそれができるという自負もあった。

 それなのに。

 どうやら清司郎の理性は、千春の前では役立たずになってしまうようだ。
 キスをしてほしいという千春の懇願を、清司郎は複雑な気持ちで受け止めた。
 彼女がなぜそんなことを言ったのか、はっきりとはわからない。
 だが、少なくともあの夜のキスが影響しているのはまちがいないだろう。
 まったく恋愛経験がない千春には、キス自体が衝撃的で自分の中だけでは消化しきれなかった。こうするのか正解なのだと思い込んでしまったのだ。
 だったら、清司郎がするべきことは、ただひとつ。
 きちんと話を聞いてやり混乱させてすまなかったと謝ることだった。

 清司郎は目を開いて、天井を睨む。
 触れるべきではないとわかっていながら、口づけてしまった千春の中は、味わったことがないような甘い蜜に満ちていた。
 苦しげに漏らす吐息、濡れた唇に夢中で口づけながら、清司郎は頭の片隅で自分自身の声を聞いていた。
 今すぐに、千春をものにしてしまえ。
 彼女が混乱している今のうちに。
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