ほんの短い恋愛小説
「どーでしょー」

 ヨウコが、にかっと笑った。
 拍子抜けして、その笑顔をまじまじと見返した。
 色気の欠片もない笑顔。スカートの裾からクマ柄のパンツが見えていても平気だった頃とちっとも変わらない、ヨウコの笑い方だ。
 気付かれないように小さく安堵の息を吐いて、停留所の屋根に切り取られた青い空を見上げる。少し残念な気もするが、同じくらいほっとした自分がいる。
 春はもうすぐ終わるかも知れないが、夏がやって来るのはまだ少し先でいい。
 ターミナルに入ってきたバスのクラクションを聞きながら、そんな事を思った。

【了】
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