オトコノキモチ


「・・・そう言えば仕事はこれから?」


沈黙を破ったのはあたし。


確か、今日は朝から仕事だって聞いていたから。


『・・・今、会社行ったんだけど・・・突然の異動で今日は夜勤に変更になったんだ』

「そうなんだ」


電話越しの空気が重たい。


次に沈黙を破ったのは直人だった。



『・・・その異動先っていうのがさ・・・社内で一番辛いところでさ。俺、そこに飛ばされたら辞めたいと思ってたくらいの部署なんだよね』


「・・・・・・そっか」


だから直人の声、暗かったんだ。


まだ社会人になっていないあたしには、まだこういう悩みはわからない。


話くらいしか聞いてあげられない。



『親の調子が悪いうえに、最悪の人事異動。今、辛すぎる・・・』



直人があたしの前でこうして弱音を吐いたのは初めてだった。


あたしを頼って弱いところを見せてくれたのかと思うと嬉しい。


だけど、どう言葉をかけたらいいのかわからない。



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