再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「誰か、塙先生見ました?」
カメラの準備をする看護師が仲間のスタッフに聞いている。

そう言えば、今日は塙くんが内視鏡に入る日のはずだけれど。

「塙先生は休みだよ。風邪だって」
いつも温厚な上田先生の声が少し冷たい。

そりゃあね、体調不良だって言われれば文句も言えない。ましてやこの時代、「風邪です」って言うのを這ってでも出て来いとは言えないだろう。でもねえ・・・

「塙先生って、確か先週もお休みしてませんでした?」
スタッフの鋭い突っ込み。

そうなのよ。
最近の塙くんはよく休む。もちろん連絡はしてくるし、当直やカンファレンスなど絶対に休めない日は出てくるのに、内視鏡や病棟待機の日に限って急なお休みが入る。

「和田先生、何か聞いてる?」
「え?」
私ですか?

「仲いいから何か聞いているかなって思ったんだけれど?」
上田先生に大意がないのはわかっている、でも・・・

「知りません。何も」
それどころか、最近は避けられている気がするもの。

「そうか」
困ったなって表情の上田先生。

最近の塙くんを見ていて、危険だなって感じてはいる。
態度も反抗的だし、発想も発言も以前に比べれば確実にネガティブ。それに、全然笑わなくなった。
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