再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「一度話をしてみましょうか？」
ちょうど敬たちとのバーベキューで一緒になるはずだし、話をしてみよう。そんな軽い気持ちで言った。

私自身、研修医時代に大きな失敗をして苦しい思いをした。
もちろん塙くんとは状況が違うけれど、少しはわかってあげられることがあるのかもしれない。
塙くんは当時の私なんかよりよっぽど優秀で、能力もあるんだからこんなところでつまずかせたくはない。私はあの頃の自分と塙くんが重なってしまった。

「じゃあ、悪いけれど話を聞いてみてくれる？」
「はい」
「くれぐれも無理はしないでね」
「もちろんです」

上田先生の暗い顔が、何を心配しているのか私にもわかっている。
研修医は医者で、社会人。でも、数か月前までは学生で現場では指導される立場。
その微妙な立ち位置と、医師と言う肩書の重みが耐え切れなくなる人間は必ず出てくる。
上田先生は塙くんがドロップアウトするんじゃないかと心配なんだ。

「来週末に救急のメンバーと塙くんも一緒にバーベキューに行くので、その時話をしてみます」
「お願いします」
「はい」
大丈夫ですよと笑って見せた。
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