再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
以前だったら必要以上に寄ってきてくだらないことまで話しかけてきた塙くんが、完全に私のことを無視している。
目があってもすぐにそらすし、当然声をかけようともしない。
それどころか、私が近づこうとするとわざとらしくどこかに消えてしまう。
しばらく様子を見ていて、やはり私は避けられているらしいと気がづいた。

でもな、私は塙くんにここまで嫌われるようなことをしたっけ?
そもそもいつからこんな風になったんだっけ?

「どうした?具合悪いか?」
背後から敬に声をかけられた。

「違うよ、大丈夫」
「ならいいけれど」

先日内視鏡室で私が倒れて以来、敬は少し心配症になってしまった。
私を見れば「大丈夫か?」って聞くし、少しでも様子がおかしければすぐに診察しようとする。
特に今日は自分が私を連れ出したって意識があるみたいで、副院長に直接外泊許可の電話を入れてくれた。

「調子が悪ければすぐに言うんだぞ」
「はいはい」
本当に元気だからと言って、何とか納得させた。

心配してくれるのはありがたいけれどここまでくると、
あれ?
敬と話している間に塙くんの姿がなくなった。

どこに行ったんだろうとキョロキョロするけれど、キッチンには見えない。
そう言えば、塙くんの様子がおかしくなったのも、私が倒れた頃からだった。
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