再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
最初から、新太先生にかなうはずはないってわかっている。それでも、苦しい思いはしたくなくて、私は久しぶりにわがままになった。

「じゃあ聞くが、もし逆の立場だったら環はどうする?」
「え?」

「もしお前が俺の立場なら黙って見逃してくれるか?」

うっ。

「きっと、どんな手を使ってでもリスクを回避しようとするだろ?」
「それは・・・」

「俺も同じ気持ちなんだよ」

確かに、もし逆の立場なら私は絶対に処置を進める。
ここで躊躇して後悔することだけはしたくない。

「大丈夫、俺がずっとついているから。な?」

何も言えなかった。
自分の行動が子供じみたわがままに思えて黙ることしかできない。
冷静に考えれば、現時点で胃洗浄はリスクを回避する最善策。医者としてはこの選択しかない。
私はわかっていてわがままを言っていたんだ。

「頑張ろうな」

もう一度頭を撫でられ、泣きそうな気分になった。
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